就業規則は、労働者の労働条件や企業のルールを定めるものであり、労働基準法により常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則の作成、届出が義務付けられています。
しかし、実務上重要なのは、原則として就業規則を備えていない会社は、勤務態度や素行に問題のある労働者に対して懲戒解雇をはじめとする懲戒処分を課すことが実質的に困難であるということです。つまり、就業規則を作成、届出、周知していない、または内容が本来の企業の実態とかけはなれている場合などは、使用者側として抗弁できる武器を手放しているに等しいのです。このような状況では、頻発する労使トラブルの悲劇が貴社に降りかかった場合、必要以上の、また想定外の費用と労力をかけることになってしまいます。
労働問題・労使間トラブルが激増している昨今、トラブルの芽を摘むために、あるいは起こってしまった問題に対応する為に、就業規則の重要性はますます高まっているといえます。その理由として、労働問題・労使間トラブルが発生した際は、就業規則の規定内容とその運用実態が、紛争解決のための判断材料として非常に重要なウエイトを占めることが多いからです。
労働問題発生の予防策としての観点から見た就業規則を作成するためには、将来発生可能性のあるリスクを説明できる社会保険労務士が適任であるといえます。
就業規則は労働者に周知することではじめて効力が発生します。
「就業規則を作成して労働者に見せると、有給休暇や残業代などの知らなくていいことを知らしめてしまう」というようなことを使用者の方から伺うことがありますが、今現在の労働問題の現状を鑑みると労働者に周知しないことによるリスクの方がはるかに大きいものと考えられます。
昨今ではインターネットを利用することにより容易に就業規則の雛形を入手することができます。また、行政がモデル就業規則を配布することもあります。しかしながら、これらはあくまでもモデル様式であり、貴社の実態とかけはなれたものをそのまま使用することがあっては、就業規則本来の(労働問題予防策としての)機能を果たすことは難しいと考えております。貴社の業種、賃金体系、勤務体系、労働条件、理念など、様々な要素を勘案してオリジナルの就業規則を作成し、実際に活かすのでなければ、将来思いもよらないコストを支払う羽目になってしまうかもしれません。
就業規則は労働条件の内容となります。使用者と労働者が約した労働条件を、使用者が一方的に変更する(引き下げる)ようなことができるのでしょうか。現在では労働契約法において、一方的な変更はできないとされています。しかしながら、激変する経済状況の中、過去の規則を変更したいというご相談は多く、そしてそれは切実なご要望であります。その解決手段として、一方的でない変更、つまり労働者との合意の上、変更を行う方法があります。当事務所では、就業規則の変更に伴う従業員説明会への同席、個別同意を得る際の書面作成など、経営者の皆様にご安心頂けるサポートを行っております。
労働契約法 第10条 (参考)
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする
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